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2022年10月 2日放送 親野智可等さん(第2300回)

会場 テレビ静岡(静岡市)
講師 教育評論家 親野智可等
講師紹介

1958年静岡県生まれ。公立小学校で23年間教師を務める。
教育現場で親が子どもに与える影響の大きさを痛感。
教師としての経験と知識を子育てに役立ててもらいたいと
メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発刊し、評判となる。

第2300回「自分のことは自分で?」

「自分のことは自分でできるようになってほしい」。子育て中なら誰もが感じることではないでしょうか。しかし、これは簡単なことではありません。頭を悩ませている人も多いと思います。

子どもができないことを親が手伝ったり、代わりにやってあげたりすると「自立の妨げになる」と昔から言われてきました。ところが発達心理学の最新の研究では、「子どもが自分でできないことは親が手伝ってあげたり、やってあげたりした方が自立につながる」とわかっています。できないことを叱ったり、否定的な言葉をかけたりすると子どもの自己肯定感が下がり、親子関係も悪くなって、かえってできなくなってしまうのです。

ある幼稚園の年少2クラスで研究観察が行われました。1組の先生は、子どもがボタンをはめられなかったり靴下を履けなかったりしてもやさしく手伝ってくれます。2組の先生は「幼稚園生だから自分のことは自分でやりましょう」と手伝ってくれませんでした。

1年後に2クラスを比べてみると、より自立していたのは1組の子どもたちでした。やさしく手伝ってくれた先生が大好きになって「先生に良いところを見せたい、期待にこたえたい」という気持ちが自立を促しました。

できないことをやってあげると親子関係が良くなったり、子どもの自己肯定感が上がったりする効果もあります。自己肯定感が上がると頑張る気持ち、そしてそれをやり遂げる自信につながります。親子関係が良くなると人を信頼できるようになって、これから先出会う人たちとも良い人間関係が築けるようになります。
周りの人に手伝ってもらった経験があると、困っている友達を助けられる子になります。逆に「自立の妨げになるんじゃないか」と考えて手を差し伸べないでいると、誰かが困っていても助けてあげられない子になってしまうかもしれません。なぜなら、その子の成長や自立のためには自分がやってあげない方がいいと考えてしまうからです。

もうひとつのメリットは「助けて」と言える人になることです。子育てや介護で大変な時、それをひとりで抱え込んでしまっている人が多いと思います。しかし何もかも全部ひとりでやるのは無理です。ひとりではどうしようもないこともいろいろ起こります。自立するためには「助けて」と言えるようになることが大切です。何でも自分でできる人はいません。人にうまく依存する能力をつけていくことが自立のためにも大切です。

「自分のことは自分で!」から「できないことはサポートする」へ。子どもたちの自立を促すため、これまでの常識を変えて、子育てをアップデートしていただきたいと思います。

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