2009年7月25日放送 金田一秀穂さん(第1645回)
会場 | 中田小学校(静岡市) |
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講師 | 日本語学者・杏林大学外国学部教授 金田一秀穂 |
講師紹介 | 1953年東京都生まれ。 |
会場 | 中田小学校(静岡市) |
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講師 | 日本語学者・杏林大学外国学部教授 金田一秀穂 |
講師紹介 | 1953年東京都生まれ。 |
私たちは、言葉を使って「言う」「聞く」というコミュニケーションをとる以外に、「考える」ことをしています。実際皆さんは、日本語ができていますが、わかっているでしょうか。
私たちには、できるけれどわからないこと、わからないけれどできることがあります。
例えば、水の入ったバケツを持って腕をグルグル回しても、中の水は落ちません。
それは遠心力が働いているからだと言われていますが、
遠心力というものが何かはよくわかりません。
バケツを回すことができても、言葉で説明することができないのです。
料理研究家が料理を作るときの分量や焼き加減、野球選手がホームランを打つタイミングなどは、
その人の経験によるニュアンスで、言葉に表せません。
また、ダイエットをしたいと思ったとき、甘いものや塩分を控えればいいとわかっていますが、
実際はできません。「わかる」ということは説明できる、言語化できることなのです。
私たちは言葉が存在するから、感じることも考えることもでき、判断することができます。
例えば「刺身」を食べると、おいしいと感じます。
しかし、それが「死んだ魚の生肉」を食べると言われたら、どうでしょう。
口に入れることも躊躇われるかもしれません。言い方は違いますが、それらは同じものです。
また、風邪をひいたら耳が痛くなることがあるということも知らなければ考えもしなかったのに、
知ってしまったために、痛みを感じるようになりました。
私たちは言葉に支配されているのです。