2013年7月20日放送 金澤泰子さん(第1846回)
会場 | 菊川文化会館アエル(菊川市) |
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講師 | 書家 金澤翔子の母 金澤泰子 |
講師紹介 | 1943年生まれ。明治大学卒業後、書家の道へ。 |
会場 | 菊川文化会館アエル(菊川市) |
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講師 | 書家 金澤翔子の母 金澤泰子 |
講師紹介 | 1943年生まれ。明治大学卒業後、書家の道へ。 |
私は40年も書を書いていますが、私の書を見て泣いてくれた人はいないのに、
娘の翔子の書を見て感動し、泣いてくれる人がいます。
ダウン症で知的障害がありIQは低いのですが、
感性がとても発達しています。
それは魂のレベルだと感じます。
それは環境によって育ったのです。
翔子は学歴社会に入らず、私と二人で家の中にいて外にあまり出なかったために、
他人と比べることをしませんでした。
ひとたび比べ始めれば、
この子はもう小学1年生なのにまだこんなこともできないなどと考えがちですが、
私と翔子の間にはちっともそんなことはありませんでした。
学校に入ってもいろいろなことで最下位ですし、
努力して上に上がろうとも考えませんから、魂に何もくっつかないのです。
とかく私たちは書を書いても、
この部分はもっと上がいいとか下がいいとか、
観念的なことを考えてしまいます。
しかし、翔子は心が完全に自由ですから、それが書にとって大きなプラスでした。
あるとき、相模湖で翔子の撮影があって、
多くの方が来てくださり翔子は皆様に名刺を配っていました。
そこに犬が1匹いました。
翔子はその犬にも両手で丁寧に名刺を渡そうとし、周囲は爆笑しましたが、
私はそういう平等感は、素晴らしいなと思いました。
歩いていてついてくる月にも感謝して、家に入るときには「ありがとう」と言います。
犬でも石でも、すべてのものは私たちを感動させてくれるということを
改めて翔子に教えられました。
またある時、翔子が、「お母様、空買って」というので「どこに売っているの?」と聞くと、
翔子は私をある駐車場に連れて行きました。
そこには「空あり」という張り紙がありました。
お金の価値も分からないし、社会の仕組みも分かりませんが、
そういうものに冒されていないだけに欲の無い、
本当に自由な書が書けるのだと思います。
無心の中には何があるかというと、「今」だけです。
目標とか、未来とかではなく、「今」思うことを書に出来る。
翔子は毎日100%の豊穣な時間の中で生きているのです。