2012年6月16日放送 落合恵子さん(第1792回)
会場 | 沼津市民文化センター |
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講師 | 作家・クレヨンハウス主宰 落合恵子 |
講師紹介 | 1945年栃木県生まれ。執筆活動と並行して、 |
会場 | 沼津市民文化センター |
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講師 | 作家・クレヨンハウス主宰 落合恵子 |
講師紹介 | 1945年栃木県生まれ。執筆活動と並行して、 |
東京と大阪に子どものための本の店「クレヨンハウス」をスタートさせてから36年になります。
「なぜ子どもの本?」とよく聞かれました。
それは、子ども時代に本を通して豊かな体験をした子は
きっと素敵な大人になるだろうと思うからです。
30代前半までラジオ局にいて、
海外取材で欧米に行くと必ず町の中に1軒、子どもの本の専門店がありました。
そこには古いテーブルが置いてあり、
そのテーブルをはさんでどこかの祖父や祖母がどこかの孫たちと話をしている。
学校では少し問題のある子が、親に言えないことをどこかのおじちゃんに話していたり...。
日本にもそんな空間が欲しいと思いました。
小さい頃、本屋さんで立ち読みをしているとパタパタと本屋の主人がはたきをかけに来ました。
一方、一生懸命に本を読んでいる私に「おいでおいで」と言って
ハッカ味の飴や金平糖を手に乗せてくれた本屋さんもありました。
私はその後者になりたいと思ったのです。
36年やってきて、今は3代目のお客さんが来て
くれます。
当時、お父さんお母さんと一緒に来ていた子が今や、
お父さんお母さんになって子どもを連れてきてくれます。
カナダに「うまれかわったヘラジカさん」という絵本があります。
無気力で希望を持てないヘラジカさんは、ある日思い立って旅に出、
ある島で出会ったカメさんと泳いだり木に登ったりして楽しい日々を過ごします。
やがてカメさんと別れて故郷に帰ったヘラジカさんは、手紙を書きます。
「大好きなカメさんへ。また君に会える日が待ちきれない。
ボクは生まれ変わることができたみたい」と。
ゆっくりでも、信頼や友情を育み、人と人とが結びつくことが、
人生を希望に変えてゆきます。
絵本は、どんな状況であってもほんの少しでも、そんなきっかけを与えてくれる存在です。