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2022年11月13日放送 バイマーヤンジンさん(第2306回)

会場 テレビ静岡(静岡市)
講師 チベット声楽家 バイマーヤンジン
講師紹介

チベット・アムド地方出身。
名前はチベット語で「蓮の花にのった音楽の神様」の意味。
中国国立四川音楽大学卒業。
1994年来日後、全国でコンサートや講演を行い、
チベットの学校建設にも力を注いでいる。

第2306回「子どもたちの未来のために」

私はチベットで生まれました。いまは日本で本当に幸せな暮らしをしています。日本に来て感じたことは、まず交通の便利さです。北海道も沖縄も日帰りで移動できます。チベットでは、大きな街までバスで丸2日かかっていました。そして医療。夜中に子どもが熱を出しても救急センターで看てもらえます。なぜ日本はこれほど進んでいるのか、義理の父に尋ねたことがあります。父は「日本は人を育ててきた、すべては教育のおかげ」と教えてくれました。

「チベットのために私は何ができるのだろう?」日本をうらやましいと思っているだけでは何も変わりません。故郷に恩返しをするためには、まず自分が変わること、そして自分から行動することです。子どもたちの未来のために学校を建てようと決心しました。最初はハンバーガーショップでアルバイトをし、800円の時給を一生懸命貯めました。次第に個人や団体から支援してもらえるようになり25年間で小学校9校、中学校1校を建てることができました。

最初の小学校を建てた時に大変だったのは、先生を集めることでした。チベット大学で教員を養成していますが、地元の貧しい家庭の子どもは進学できないことが多く、人材が不足していました。そこで私は奨学金制度を作って子ども達を支援することにしました。

5年ほど前にチベットに帰った時、私の部屋を訪ねてきた人がいました。ドアを開けると女の子が立っていました。彼女は奨学金を受けていた学生でした。医科大学を卒業して、今はチベット大学で医学を教えているそうです。「自分の給料でご馳走させてください」と私を食事に誘ってくれました。彼女はとても印象深い子でした。初めて会った奨学生との顔合わせでは、うつむいたまま小さな声で挨拶をしていました。その時、私は「あなたを支援できることは本当に幸せです。家が貧しくても恥ずかしいことではないんだよ」と彼女に伝えました。

彼女は食事をしながら夢を語ってくれました。「もっと英語の勉強がしたい、そして自分のように困っている子がいたら助けてあげたい」彼女の笑顔は自信に満ちて輝いていました。

そして最近、もうひとつ良い知らせがありました。第七小学校の卒業生が、母校の先生になったのです。彼は小学生の頃、学校視察に訪れた私の姿を見て「自分も故郷を助けられるような人になりたい」と思い、勉強をがんばったそうです。

子どもたちの活躍ぶりを見ていると本当にうれしく思います。私自身の励みにもなります。小学校を作ることはすぐに結果が出るものではありません。しかしその時にまいた種は花を咲かせ、実を結んでいました。

故郷の未来を担うのは子どもたちです。大人の私たちにできることは、子どもたちが希望を持てる環境を整えること。そして自分たちががんばる姿を見せることだと思います。これからも私を育ててくれた故郷に恩返しができるよう、できる限り努力していきたいと思います。

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