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2024年2月18日放送 鈴木一光さん(第2369回)

会場 三島市民生涯学習センター(三島市)
講師 児童育成協会理事長 鈴木一光
講師紹介

1947年生まれ。明治大学法学部卒業後、
児童指導員として、日本教育開発センターに。
専門は児童福祉、児童館事業。2020年4月より
公益財団法人 児童育成協会の理事長を務める。

第2369回「遊びは生きがい」

人間が「なぜ遊ぶのか」を研究した心理学者は世界中にたくさんいて、本で調べると300種類ぐらい遊ぶ理由があります。その中でいま通説になっているのは「覚醒追求説」、退屈をしのぐためという説です。人間は生物としてシャキッとした状態でいたい。そうしないと捕食されたり、どこに餌があるか見つけられなかったりします。それと同時に、自分の能力を高めたいという「能力効力説」があって、この2つの説がいま、世界の通説になっています。

「覚醒追求説」は、アメリカ海軍とスタンフォード大学の実験で発見されました。軍のレーダーは、優秀な兵隊が見ています。レーダーの監視は何にもないのが普通で、ずっと見ていると退屈になり神経が緩んできて、今度は大事なものを見落としてしまうのだそうです。研究の結果、人間は退屈すると能力が落ちる。一時間に一度席を立って上官に「異常なし」と報告するだけで、リセットされるそうです。優秀な人でもある一定のことを常にさせてはダメだということがわかってきました。

それからもう一つは「能力効力説」です。赤ちゃんが泣いているときにお母さんがガラガラを鳴らすと、赤ちゃんが見て笑う。それを近くに置いておくと、最初は偶然に握って動いたときにカラカラと音がして、お母さんが急いで来て「えっ、ガラガラ振れたの?えらいね!」と、これが「能力効力説」です。認め、褒めてもらえたということで、一生懸命自由に筋肉を動かせるように自分で工夫して、うまく握り鳴らせるようになって、能力が伸びていくということです。

さて、自分の最初の記憶はいくつくらいからありますか?アメリカの医師が実験したところ、最初の記憶があるのが三歳前後。つまり三歳までの記憶力はあまり確かではないようです。その頃の子どもの特徴は、快適なこと、楽しいことだけを追求します。それから、無目的で、明日のために生きていません。今がすべてですから、友達と喧嘩しておもちゃを取り合います。「明日また会うとバツが悪いから、今日は譲ってやろう」なんて考えません。それから、好きなことを満足するまで追求して自己中心的です。「親が明日仕事がありそうだから、もう夜泣きをやめよう」なんて考えてくれません。徹底的に夜泣きします。「快適を追求し、無目的で、自己中心的」これらが三つ揃って正常な発達なのです。そういう正常な発達を考えると、大事なのは子どもの興味を引くことで、それが「遊ぶこと」なのです。

「遊び」というのは「生きがい」と連動しています。好きな時に好きな活動を自由にできることで、人間は一番集中するわけです。遊びを通して、興味関心を高めるところへ子どもを導いてあげることが大切で、それには指導者の感受性、子どもの近くにいる親や学校の先生など関わる人の感受性が大事になってきます。自分のメンターになる人の生き方に子どもは感化され模倣していく、そういう大人が必要だということです。

ぜひ子どもには好きな「遊び」に夢中になって、遊びの持っている力で成長していってほしいと思います。

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