“手のひらサイズの仏壇”は家族の歴史をつなぐ? 息子の提案に最初は当惑…工房親子の挑戦 静岡

2024年04月06日(土)

暮らし・生活ビジネス(政治・経済)

i仏壇と稲垣社長と次男・亘佑さん

手のひらサイズにまで仏壇を小型化してしまうという息子の提案に、当初は抵抗があった職人気質の父も最終的には受け入れることとした。形や大きさにこだわるのではなく、先祖に手を合わせる文化をずっとつなげていきたいと願う親子。仏壇の再生工房が始めた次世代へ向けた取り組みを追う。

“手のひらサイズの仏壇”は家族の歴史をつなぐ? 息子の提案に最初は当惑…工房親子の挑戦 静岡

仏壇を置かない家が増加

仏壇と手を合わせる人

信仰の対象となる本尊や先祖をまつり、手を合わせる場所として自宅などに置かれる仏壇。

以前は多くの家にあった仏壇だが、住宅事情やライフスタイルの変化によって最近では仏壇を置かない家庭も増えている。

稲垣塗装所(静岡市)

静岡市葵区にある稲垣塗装所。

木工の街・静岡で50年以上の歴史を持つ仏壇の再生工房だ。

稲垣 豊 社長

稲垣豊 社長は「先祖の大事な仏壇をきれいに使ってもらいたいという思いがあり、預かってバラバラにして(修復して)元通りの形に戻して返すのが仕事」と話す。

「どんなに古く傷んだ仏壇もきれいに再生させる」を信条に木工職人とともに仏壇の伝統を守っているそうだ。

解体された仏壇

一方で住宅事情や少子化の影響で仏壇離れが進むとともに仏壇の跡継ぎがおらず、「処分しなくてはならない」といった声が年々増えているようだ。

仏壇を置いている人、置いていない人はそれぞれどう思っているのか。その事情を聞いてみた。

仏壇を置いていない人

仏壇を置いていない人は「実家にあったので親を亡くした時に、仏壇を一緒に持って来れれば良かったけど、手が回らずに無くなっちゃった。心の拠り所という気持ちもあるのであった方がいい」と話してくれた。

仏壇を置いている人

また、仏壇を置いているという人は「昔の仏壇に比べればコンパクトでモダンなものを選んだ。できるだけ手入れがしやすくて、場所を取らなくてというのが判断基準」と言う。

子どもに仏壇を引き継ぐつもりかとたずねると「考えていない。私たちで終わり。もらってくれればいいけど」と答えが返ってきた。

”手のひらサイズ”で問題解消へ

手のひらサイズの仏壇を持つ大村記者

こうした問題を解決しようと稲垣塗装所は2024年2月、新しい取り組みをスタートさせた。

大村秀行 記者:
処分に困ってしまった大きな仏壇ですが、手のひらサイズへと生まれ変わらせるサービスが始まりました

再生された仏壇

「仏壇の日」にあたる2月27日から始めたのが、「結壇(ゆいだん)」と名付けられたサービスだ。

注文を受けた仏壇を回収し、お寺で供養したあと職人が解体・加工して、手のひらサイズの仏壇へとよみがえらせる取り組みだ。

仏壇の須弥壇の彫りの部分

「例えば欄間を中心に作ったり、この須弥壇の彫りの部分を主に使っている。一番印象に残っていると所を材料として使って」と稲垣社長が説明してくれた。

再生された仏壇

「結壇」のコースは3つ。

元の仏壇の一部分を、再び活用して箱型にする「梅」。

すべてを、元の仏壇の部材で作る「竹」。

そして、大きさや形に制約がなく、金箔を施すなどのフルオーダーの「松」。

再生された仏壇

専用の位牌やお鈴などはオプションで用意されていて、手を合わせ時以外は仏壇の中に収納することが可能だ。

さらには、1つの仏壇から複数の小さな仏壇を作ることも可能なので、兄弟や親せきなどと分け合うこともできる。

先祖に手を合わす文化を繋げる手伝い

稲垣社長と次男・亘佑さん

構想からサービス開始まで約3年かかった。

発案したのは、稲垣社長の次男・亘佑(こうすけ)さんだ。

現在はIT関係の仕事をしているが、将来、事業を承継することを決めているそうだ。

稲垣社長の次男・亘佑さん

稲垣社長の次男・亘佑さん:
自分事として考えた時に大きいサイズは置けないと思って。このサイズだったら納得して置ける、置きたいという思いでこの形にした。これからの世代である私たちが、今まで作ってきた職人たちや文化をつないでいけたら

稲垣 豊 社長

長年にわたって仏壇を扱ってきただけに、手のひらサイズという発案には「抵抗があった」と話す稲垣社長だが、最終的には次世代につなげるための可能性を信じることにしたそうだ。

稲垣塗装所・稲垣豊 社長:
ここまでコンパクトにするというのは私たち職人としたら想像できない。だけど次の世代に持っていくには大きさや形ではなく、手を合わせられる対象があることがすごくいいと思う。仏壇というのは、目に見えない先祖に手を合わせるもの。手を合わせる文化をずっとつなげていく手伝いができたらと思う

再生された仏壇

伝統ある仏壇の歴史や手を合わせる文化を次世代につないでいこうという思い。

この取り組みが新しい選択肢の1つになっていくのかもしれない。

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