「何で私なんですか?」 熱海土石流で28人犠牲…崩れ残った盛り土の撤去を命じられた男性の不満 静岡

2024年04月15日(月)

事件・事故地域暮らし・生活

熱海土石流と起点の前土地所有者・天野氏

28人が犠牲になった静岡県熱海市の土石流災害は、土石流の起点の違法な盛り土が被害を大きくしたとされている。県は再発防止のため崩れずに残った盛り土を撤去するよう土地の前所有者に命じたが応じていない。前所有者は「なんで私なんですか?」と不満を漏らす。

【動画】28人死亡の土石流 残った盛り土の撤去命令を拒否した男性の言い分 県が代執行費用11億円を請求

遺族らが土地所有者や行政に賠償請求

土石流起点部の前土地所有者・天野氏

土地の前所有者・天野二三男 氏:
(行政代執行の費用を払うのが)なんで私なんですか?私が人の入れた泥(盛り土)まで片付けるんですか。違反の泥(盛り土)の場合は、ですよ。合法なら片付ける必要ないでしょ

はっきりとした口調で答えるのは、土石流の起点となった盛り土が造成された当時、その土地を所有していた神奈川県小田原市の不動産会社の元代表・天野二三男 氏だ。

熱海市を流れ下る土石流(2021年7月)

2021年7月3日、熱海市伊豆山地区を大量の土石流が流れ下った。犠牲者は災害関連死を含む28人となっている。

建物は133棟が全半壊などの被害を受け、住民582人が避難所での生活を強いられた。

土石流の起点部(2021年7月)

土石流をめぐっては違法な盛り土が被害を拡大させたとみられている。

天野氏は問題の土地を2006年に取得し、熱海市への申請を経て2007年から盛り土をした。当該の土地は2011年に天野氏から今の所有者に売り渡されている。

遺族や被災者は盛り土を含む土地の前所有者の天野氏と現在の所有者を殺人などの疑いで刑事告訴した。

提訴する遺族や被災者(2021年・地裁沼津支部)

また、遺族や被災者は民事訴訟も起こしていて、土地の前・現所有者のほか、違法な盛り土を防げなかったとして熱海市や静岡県も被告に加え計120億円余りの損害賠償を求めている。

天野氏に遺族に対する気持ちを尋ねると「本質的には発生当初と変わりません。亡くなられた方、ご遺族の方のお気持ちをもちろんお察ししています」と返ってきた。

行政の資料の出し方を非難

遺族らの損害賠償請求訴訟(地裁沼津支部)

土石流の発生から2024年4月で2年9カ月が経った。

土地の前所有者である天野氏は一貫して「自身に責任はない」と主張している。

民事裁判が進む中、天野氏は「すべての資料を開示しない行政の対応に問題がある」と指摘した。

天野氏の批判の矛先は裁判をめぐる資料の開示が熱海市に比べて多い静岡県に向いていて、「私が土地を現所有者に引き渡すまでの資料は膨大にあるが、引き渡した後の資料は見受けられない。なにこれ」と疑問を口にする。

「市の指導の範囲で盛り土」

天野氏が熱海市に提出した計画書

県などによると、当時、天野氏が市に提出した計画書には条例で定める盛り土の上限いっぱいの「高さ15m」と記載があったものの、実際はこれを大きく上回る土が積み上げられていた。

これについて天野氏は「15mという規定を知らなかった。市からの指摘もなかった」と主張する。

天野氏によると「熱海市から指摘は一切なく、15mが上限ということは私自身も会社の設計部も知らなかった」という。

県が盛り土残土を撤去(2022年)

県は再発防止のため、土石流の起点に残った盛り土を撤去するよう求める措置命令を天野氏に出した。

しかし、天野氏はこれに応じず、県が行政代執行によって土砂を搬出した。

土砂には環境基準を超えるフッ素や鉛が含まれているため県外の施設で処理する必要がある。かかった費用 約11億円を天野氏に請求しているが天野氏は払っていない。

撤去した土砂を県外へ運搬(2023年)

土地の前所有者・天野二三男 氏:
私の方は(熱海市の)指導の範囲の泥(盛り土)を入れています。だから措置命令を受ける必要はない

天野氏は「払う必要はない」との主張だが「たとえ払う責任があったとしても、盛り土をしたのは自分だけではないので、ほかに盛り土をした人にも措置命令を出し、運び入れた量に応じて費用を分担すべきだ」と強調する。

警察も事情聴取

事情聴取後に取材に応じる天野氏(熱海署)

こうした中、静岡県警は2024年2月から天野氏への任意の取り調べを始めた。

3月15日、天野氏は2回目の聴取のため警察署を訪れた。代表だった不動産会社での役割などについて警察に聴かれたという。

事情聴取の後に取材に応じた天野氏は「この事故について私の立ち位置が冒頭から断定的に物事が運ばれてきた。『偏向的な質問などは避けてほしい』と警察に要望した」と話し、今後の任意聴取にも「事実に基づいた主張をする」としている。

土地の前所有者・天野二三男 氏:
私がいくら「こうだろう」「ああだろう」と言ったところで通用する話ではない。事実の中からものを答える。そして、調査をしていただくという姿勢で私はいます

熱海市で発生した土石流(2021年7月)

熱海市を襲った土石流は28人の命を奪ったほか、一時582人が避難生活を余儀なくされた。2024年3月時点でも40世帯78人が避難生活を続けている。

そこに住む人たちの暮らしを大きく変えてしまったのは事実で、遺族や被災者は“人災”だと思っている。

原因究明とそれに基づく責任の追及が急がれる。

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