【園児バス置き去り死亡事件】まもなく初公判 運営法人の現理事長「入園希望者がいれば受け入れる」 静岡

2024年04月22日(月)

事件・事故地域

事件から1年を前に会見に応じた現理事長(2023年9月)

2022年9月、静岡県牧之原市にある認定こども園の送迎バスに3歳の女児が置き去りにされ死亡した。検察は後にバスを運転していた当時の理事長 兼 園長とクラス担任の2人を業務上過失致死罪で在宅起訴し、2024年4月23日に初公判が開かれる。
(以下は、2023年9月5日に配信した記事の再掲載で、データ等は当時のものです)

園児バス置き去り死亡事件 検証委が園や関係者を痛烈非難「命を預かる業務であるという意識が薄かった」

命を預かる責任感は?ずさんな安全管理

2022年9月5日。静岡県牧之原市にある認定こども園「川崎幼稚園」で河本千奈ちゃん(当時3)が登園バスに置き去りにされ死亡するという痛ましい事件が起きた。

園側の説明や警察などへの取材によると、事件当日の午前8時43分頃、千奈ちゃんはいつも通り登園バスに乗車し、川崎幼稚園には午前8時50分頃に到着。しかし、バスを運転していた園を運営する学校法人榛原学園の増田立義 理事長 兼 園長(当時)と派遣社員(70代)の補助員はいずれも園児が降車する際、車内に取り残された子供がいないか確認していなかったほか、降車した園児の名前と人数を照合していなかったという。

さらにクラス担任と担任補助も、千奈ちゃんが教室にいないことを認識していたにも関わらず、別の職員に確認することも、保護者に問い合わせることもなかった。

そして午後2時10分頃、園児の降園に向け準備をしていた職員がバスの中で倒れている千奈ちゃんを発見。5時間以上もの間、車内に置き去りにされていた千奈ちゃんは病院に救急搬送されたものの、約1時間後に死亡が確認された。当日の最高気温は30.5℃。警察の実験では車内の温度が40℃を超えていたとみられることがわかっている。

事件後、増田立義 氏は榛原学園の理事長と川崎幼稚園の園長を辞任。後任の理事長には立義 氏の息子で川崎幼稚園の事務長を務めていた増田多朗 氏が就いた。

現理事長がインタビューに応じるも…

事件発生から1年を前に報道各社が榛原学園に対する取材を要請する中、9月4日、増田多朗 理事長がインタビューに応じた。ただ、学園側が許可したのは静岡県社会部記者会の幹事社(記者1名)による代表取材で、他の記者は同席すら認められなかった。この点について学園側の代理人弁護士は「時間的な余裕がありません」としている。また質問事項も事前送付を求められた上、増田多朗 理事長は提出した内容以外の問いについては回答をすべて弁護士に委ね、さらに前理事長であり当時の園長である立義 氏は姿を見せなかった。

増田多朗 理事長は冒頭、5日で事件から1年となることへの所感を聞かれると「千奈さんの幼く尊い命を奪ったことに対し、心よりご冥福をお祈りするとともに、ご遺族には心よりお詫び申し上げたい」と述べた。

しかし千奈ちゃんが乗っていたバスを運転し、降車確認をしなかったなど当事者であるはずの増田立義 前理事長が同席していないことについては「インタビューを希望する社がほとんどなかった」(※実際には複数の社が要望)と答えたものの、「要望すれば応じてもらえるのか?」と問われると「そのつもりはない」と即答した。

明らかになった埋めがたい“溝”

会見で明らかになったのは、遺族側や牧之原市側との埋めがたい“溝の深さ”だ。

事件を受け、当初、榛原学園側は千奈ちゃんの両親と「川崎幼稚園を廃園にする」との念書を交わしたとされているが、増田多朗 理事長は「ご遺族の悲痛な思いというものは十分理解している一方、希望者がいる以上は園の継続はしていかなければいけないと考えている」と話し、千奈ちゃんの父親が8月30日に取材に応じた際に言及した「在園児がいなくなるまでは続けさせて欲しい」との言葉は発していないとした。その上で、2023年度も新入園児を受け入れている理由については「入園希望者がいれば受け入れる」「園に入園希望者がいる以上は園の継続をするということになる」と似通った説明に終始した。増田多朗 理事長によると、事件を受け園児21人と職員11人が園を離れたものの、9月1日現在も110人の子供が在園しているという。

学園側は2022年10月以降、月に1回ほどのペースで遺族と面談を重ねているが、千奈ちゃんの父親が「学園側とのやり取りをSNSで発信しないで欲しいと言われた」と主張していることについては「誤解がある」と反論し、「妻に対して睨みつけて声を荒げて受け答えをした」と指摘された点については「声を荒げたということはないと思う」としながらも、「ご遺族がそのような気持ちになったとしたら、今後より丁寧な対応をしていきたい」と答えた。

また「胡坐をかきながら誠意ある対応をされなかった」と糾弾されたことに対しては「正座で謝罪をしていたが、ご遺族から『足を崩しても結構です』と何度も話があり、胡坐をかいたことはあると思う」と話した。

一方、榛原学園をめぐっては事件直後、牧之原市から委託を受けている3つの保育事業から撤退する考えを示していたものの、その後、一転して運営を続ける意向を市に伝えている。増田多朗 理事長は、一度は撤退の考えを明らかにしたことについて「前理事長が自責の念にかられて、あのような発言をしたと理解している」との見解を示した。特に学園側が運営を委託されている細江保育園に関しては、市の審査委員会が「榛原学園の指定管理期間が終了次第、牧之原市社会福祉事業団を運営者とすることが妥当」と答申していて、市も契約期間の満了を待たずに運営を社会福祉事業団に移管するよう求めているが、学園側がこれを拒否している。この理由について増田理事長は「指定管理の前倒しによる混乱を生じさせてはいけないと考えている」と発言した。

さらに保護者会で「理事長の就任は一時的」と述べながら今もその職に就いていることについては「安全安心な園であることが確信でき、後継者が決まったら理事長を交代したいという考えに変更はない」と口にした反面、千奈ちゃんの父親が求めている「公の場での説明」については「ご遺族の思いは理解しているが弁護士と検討して決めたい」と明言を避けた。

この事件をめぐっては、警察が当時の理事長 兼 園長である増田立義 氏やバスの補助員、クラス担任、担任補助の計4人を業務上過失致死の疑いで書類送検し、検察による捜査は今も続けられている。千奈ちゃんの父親は「私たちがどうにかできる問題ではないのでわからないが、4人が起訴されることを強く求めている」とした上で、民事訴訟については「具体的に誰を相手取るのかは、刑事裁判もまだ終わっていないので、しっかりと確定した後に進めていきたい」と話している。

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