2013年7月13日放送 矢島稔さん(第1846回)
- 会場
- 香貫小学校(沼津市)
- 講師
- ぐんま昆虫の森名誉園長 矢島稔
講師紹介
1930年東京生まれ。昆虫学者。
東京の豊島園昆虫館を創設し、
多摩動物公園に日本初の昆虫生態館をつくる。
ぐんま昆虫の森園長を経て、2013年4月名誉園長に。
ラジオの子ども電話相談の回答者もつとめる。
第1846回「花と蝶」
私は少年の頃からカメラで虫や花を撮影してきました。
(キチョウとアザミの写真を見ながら)当時は接写するのも一苦労でしたが、
今はとても簡単で便利になりました。
アザミは集合花といって、ひとつに見えてもたくさんの花が集まって出来ています。
だから蜜がいっぱいあります。
花にも目的があります。
アザミの花に蝶が飛んできて止まり、蝶の重みで花が揺れると、
中からおしべが浮き上がり、蜜を吸う蝶の足や長い口にくっつきます。
それを他の花のめしべに運んでもらうのです。
花はその代わりに蝶に蜜を与えるという仕組みです。
自分では動けないアザミはそうして仲間を増やしていくのです。
自然界には巧みなギブ&テイクがあり、まるで、植物にも意思があるように感じられます。
蝶の口はストローのように長く伸びます。
昆虫の体はシンメトリー(左右対称)で、
そのストローも2本の管が雨どいのように半円のものがかみ合わさってひとつになります。
それがうまくいかない固体もあって、そうすると蜜を吸うことが出来ず、死んでしまいます。
98%うまくいっても2%がだめだと生物は生きていけないのです。
蝶は何を見ているのでしょうか。
最近の研究で、昆虫は、紫外線が見えることが分かりました。
可視光線より波長の短い紫外線を使ったストロボをたいて撮影すると、
蝶は人間とは全く違うものを見ていることが分かりました。
人間の目にはモンシロチョウのオスもメスも白く見えますが、
蝶にはオスは白でなく真っ黒に見えるのです。
メスはそのまま白です。
ですから、モンシロチョウは飛んできた蝶がオスなのかメスなのかを瞬時に判別できるのです。
人間が見るとすべてが黄色で美しいタンポポも、
蝶が見ると外側が白く、中は黒で、そこに蜜が詰まっているのです。
菜の花も同じで、花びらは白で中は黒に見えます。
花は蜜のありかをちゃんと蝶に教えているのです。
何でも、人間の標準で考えてはいけないと教えられているようです。