2022年4月24日放送 高濱正伸さん(第2277回)
- 会場
- テレビ静岡(静岡市)
- 講師
- 花まる学習会代表 高濱正伸
講師紹介
1959年熊本県生まれ。東京大学・同大学大学院卒業。
1993年、思考力などを重視した「花まる学習会」を設立。
その後本格的な学習方法を伝授する「スクールFC」を設立。
子どもの「生き抜く力」を育てることを重視した教育が好評。
番組で紹介した本
「つぶさない子育て」著:高濱正伸(PHP研究所)第2277回「不自由を楽しむ」
無人島でのキャンプのある一日、特別なルールを作りました。ご飯だけは用意しますが、おかずは自分たちで調達する。何も獲れなかったら「しょうゆ飯」。追加ルールとして各班40分間、船で沖に出て釣れた魚は食材にできることにしました。各班予想外の豊漁でしたが、ある班だけまったく釣れませんでした。がっかりする子どもたち...。まさに「逆境のどん底」です。
そんな中アイデアがひらめきました。浅瀬を群れで泳ぐ小魚を獲ろうというのです。ある子が砂で道を作り、別の子がビニール袋を網の代わりにして待ち構えます。そして他の子たちが小魚の群れを追いたてます。「追い込み漁」です。漁は大成功で30匹ほどの小魚が獲れました。でもどうやって食べたらいいのか?ある子のアイデアで干してみることに。早速、小魚をアルミ箔にのせ炭火であぶって干してみました。すると自然の塩味の効いた、どんな料理よりもおいしい魚に仕上がりました。
初めての無人島で絶品メニュー。漁法を思いついた子、そして調理法を考えた子、それぞれの名前を取って「そうすけ&ひろのりメソッド」として後輩たちに引き継いでいくことになりました。
子どもの遊びは「化学反応」です。いい形で「逆境」を設定してあげると、それを乗り越えたとき最高の工夫や喜びを与えてくれます。チームワークを授けてくれたり、人として強くしてくれたりします。そして一生の思い出にもなります。
2021年9月、コロナ禍が1年半以上続いた夏休み明け、授業に来るのを嫌がる子が増えました。これまでにはなかったことです。ステイホームで家の中にしか居場所がなかった子どもたちは、心を閉ざしてしまっていました。それ以上に、この時思ったのは「普段は太陽みたいなお母さんたちも曇ってしまっていたのでは?」ということでした。長期化するコロナ禍、実は大人も相当堪えていたのだろうと思います。子どもにとって自分の居場所、帰る場所が安心で安全であることが何よりも大切です。そのうえで思い通りにならない「逆境」に直面し、それを乗り越える体験が子どもを強くします。
哲学者ルソーは、子どもの自立にとって「転ばぬ先の杖を出すことは最も残忍な仕打ち」と言っています。子どもをやさしく見守る親心は偉大です。しかし子どもたちを強くするために、時には「不自由を楽しむ」体験を後押ししてあげてください。