海底噴火に驚愕!次はどこで…火山と暮らす街の不安 噴火の影響が予想される範囲を拡大 静岡

2024年04月17日(水)

地域暮らし・生活

伊東市沖で海底火山が噴火(1989年)

静岡県伊東市は火山活動で出来た絶景や温泉が人気の観光地だ。ただ、35年前に海底火山が噴火し、今後も街のどこかで噴火する恐れがある。伊東市は噴火による影響範囲を従来よりも広く想定し避難計画を見直した。これにより、最大で市民の7割が市外に脱出しなければならない。

海底噴火に驚愕!次はどこで…火山と暮らす街の不安 噴火の影響範囲を拡大

火山の恵みで人気観光地に

大室山(伊東市)

静岡県伊東市は大室山や城ケ崎海岸など豊かな自然に恵まれている。

大室山は約4000年前に活動した標高580mの伊豆半島最大の単成火山で、山体はほぼ原形を留めている。直径250mの噴火口がある山頂には麓からリフトで登れ、富士山や相模湾を望みながら噴火口の周囲を散策することができる。

城ケ崎海岸(伊東市)

大室山の噴火で溶岩が海岸に流出し多くの岬を作り、波の浸食で数十mの絶壁ができた。これが城ケ崎海岸だ。眼下に海を臨むつり橋がかかり、スリル満点のハイキングが楽しめる。

火山活動の爪跡は両方とも今では観光名所となっている。

伊東市

大室山を含む地域は「伊豆東部火山群」と呼ばれている。

噴火のたびに火口の場所を変える小さな火山の集まりだ。ひとつひとつの火口は噴火を終えているが、今後も火口が分布する範囲のどこかで噴火するおそれがある。

噴火後に作成した避難計画を見直し

伊東市沖3kmで海底火山が噴火

1989年7月、伊東市沖 約3kmの海底で約2700年ぶりに火山が噴火した。1978年以降、伊東市の沿岸から沖合にかけての領域で繰り返しマグマの上昇が起こり、これに伴う群発的な地震活動が発生していた。

噴火を想定した避難訓練

1989年の海底噴火は直接的な被害はなかった。

ただ、伊東市は噴火への備えが不十分だったことから、2015年、伊豆東部火山群に備えた避難計画を策定し避難訓練も行っている。

伊東市は噴火の影響範囲を見直し

しかし、2024年3月、伊東市はこれまでの避難計画を大きく修正した。

影響範囲を見直し、従来よりも広範囲にしたことにより、市内の避難対象者数が大幅に増加した。

これまでの避難計画では最大で約3万8000人の市民が市内の避難所に徒歩で避難する計画だった。しかし、噴火による影響が広い範囲に及ぶことがわかり、最大で約4万6000人の避難が必要となった。市の人口の約7割だ。これは市民だけで、観光客を除いた数となっている。

市民の7割が48時間で避難できる?

伊東市民

このため、市は車や電車やバスで市外へ広域避難させる方針に変えた。しかし、車での避難に不安を感じる市民も少なくない。

市民は「車では渋滞する。うまく避難できないのでは」「車の運転が苦手で、車で逃げるのは無理な気がする」「(隣の)熱海まで向かう道路が1本なので渋滞する。(車での避難は)絶対に無理」と心配する。

伊東市

無事に避難できるのか…伊東市は避難を始めるタイミングが重要になると考えている。

伊東市は「臨時の解説情報」が発表された段階で、観光客に避難指示を発令する。

さらに、低周波地震が観測されるようになる「噴火警戒レベル4」で高齢者や要支援者に避難指示を出す。

伊東市

また、火山性微動が観測される「噴火警戒レベル5」で市民に避難指示を発令する考えだ。

一般に火山の噴火警報の場合、火口周辺への立ち入りを規制する「噴火警戒レベル2」や入山規制をする「噴火警戒レベル3」があるが、伊豆東部火山群の場合は山体や火口が無い所から噴火するケースがあるため、レベル2や3はなく一気にレベル4となる

静岡大学・小山真人教授

どこから噴火するかわからない中で無事避難できるのだろうか。

火山学が専門の静岡大学・小山真人 教授は「今回の避難計画はあくまで1989年の噴火の時の時間的余裕の中で避難できるかを確かめた計画。1989年と同じ状況なら(火山性微動が観測される)噴火警戒レベル5から噴火まで48時間の余裕がある。その48時間で逃げ切れるかどうかシミュレーションをして、おそらく逃げ切れるだろうとわかったのでこの計画を作っている」と、作成の経緯を明かす。

観光客5万人の避難は?

伊東市の宿泊施設

さらに、観光客は最大で約5万1000人が避難すると想定されていて、宿泊施設も対応を迫られている。

伊東温泉ホテル旅館協同組合の北岡郁子 副理事長は「災害はいつ起こるかわからないのが一番不安。最近はインバウンドの方もたくさんいるので、日本人だけでなくて外国の方を案内するのに、どの表示するのか、どう案内すれば一番スムーズに安全に行動できるのか悩んでいるところです」と打ち明ける。

伊東市の新たな避難計画

今回修正された避難計画では、観光客は市外の自宅へ、市民は町内会ごとに富士市や下田市など11市町の指定避難所に避難することになっているが課題も残されている。

伊東市の小野達也 市長は「想定してはいるものの、その通りになるかどうかは確実なものではない」と課題が残っていることを認めた上で、「まずは避難の方向性をつけ、他の自治体にも避難先をお願いしたことは大きな前進」と新たな避難計画の意義を強調する。

「火山群の中で暮らすことを意識して」

約4000年前に噴火した大室山の火口

避難計画作成に関わった小山真人 教授は、「きれいな景色や温泉など普段は火山の恵を受け、火山の麓に暮らしている。溶岩流や火山灰の跡を見て、自分たちは火山群の中に暮らしていることを意識してほしい。いざとなったら こういうことをしないといけない、避難計画もその一つだ。噴火だけはなく地震も(火山活動に)伴うので、地震の揺れの警戒も怠らないようにしてほしい」と話す。

北海道・有珠山の噴火(2000年)

2000年の北海道・有珠山での噴火では事前に避難指示や避難勧告が発令され、人的な被害はなかった。

しかし、2014年、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山では突然の噴火によって63人が犠牲となった。

伊豆東部火山群、そして富士山も観測体制が整い、事前に予測できる可能性はあるもののいつどこから噴火するかわからない。

噴火に備え、避難経路や避難先などを確認しておくことが大切だ。

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