残業規制で年間9億tの荷物が運べなくなる? 「よろしくない」「収入が…」トラック運転手も困惑 静岡

2024年04月20日(土)

ビジネス(政治・経済)

トラックの運転席

2024年4月からトラック運転手の時間外労働が年間960時間までに制限された。輸送能力の低下が懸念され、国は何も対策を講じければ2030年には年間約9億トンの荷物が運べなくなると予想する。運転手も収入の減少などを心配している。規制の影響や物流会社の対策を取材した。

【動画】ネット通販の「翌日お届け」「配送料無料」が制限される? 物流の2024年問題

「翌日」「無料」配達が制限される可能性

ネット通販のサイト

ネット通販などを使う時によく目にする「翌日お届け」や「配送料無料」といった文字。

街で聞くと「ネットショッピングや息子に荷物を送る時に利用するが、すぐ次の日に届くのはすごく便利」「単身赴任しているので置き配で使う。便利だと思う」と好評だ。

静岡県トラック協会・佐野会長は「翌日配送や配送料無料などのサービスは、これまでトラックドライバーが昼夜を問わず走り続けてきたからこそ成り立ってきた側面があり、これからは無制限のサービスは提供できなくなる可能性がある」と打ち明ける。

輸送能力3割減 荷物が運べない

トラック運転手の時間外労働を規制

私達の暮らしを支えている物流の現場で、今 懸念されているのが「2024年問題」だ。
これまでトラックドライバーの長時間労働が問題となってきた物流業界。労働環境の改善を目的に2024年4月から時間外の労働時間が年間960時間に制限された。

労働時間の基準を定めた「改善基準告示」も改正され、拘束時間なども変更された。一日の拘束時間は最大16時間から最大15時間となり、次の出勤までに取らなければいけない休息時間は8時間から11時間となった。

2030年には輸送能力が約34%不足か

静岡県トラック協会では、労働時間が短くなることで運行回数が2割ほど減ると予測する。佐野寛会長は「そのまま回数だけを減らすと稼働率が下がり運送収入が減る。経営をどうしようかというのが、我々の業界に与える影響」と話す。

国の推計によると2024年問題に対して対策を何もしなかった場合、2030年には輸送能力が約34%不足し、年間9億t相当の荷物が運べなくなるとされている。

ドライバーも「よろしくない」

輸送効率向上へ交通ルールを変更

こうした背景から、警察庁は総重量が8t以上のトラックについて、高速道路での最高時速を80kmから90kmに緩和することで、につなげようとしている。

一方でドライバーの高齢化や収入減少による深刻な人手不足への対応が求められている。

トラック運転手

県トラック協会によると、静岡県のトラックドライバー約3万9000人の年齢分布をみると45歳以上が72%だ。

時間外労働時間の上限規制による2024年問題について、ドライバーに聞くと「待ち時間があるので決められた時間で仕事を終わらせるのは厳しい。安定した収入が入るならいいかな」「個人的にはあまりよろしくない。僕らドライバーは何もできないから言いなりになるしかない」などの回答だった。

「中継輸送」でドライバーの負担軽減

遠州トラックの入社式

静岡県袋井市の物流会社「遠州トラック」は約700人のドライバーを抱え、北海道から九州まで配送を行っている。

人材不足が懸念されている中で例年20人程度の新卒採用を行っていて、2024年度も18人の新入社員を迎えた。

遠州トラックの中継輸送用車両

若い働き手も注目しているのが「中継輸送」という取り組みだ。1つの運行行程を複数人のドライバーで分担する。

中間地点でトラックを乗り換えたり、荷物を積み替えたりすることで、ドライバーがこれまで2日間かけていた運行を日帰りで可能にする。1人当たりの輸送距離を削減され、ドライバ―の負担が軽減される。

大型ドライバー歴 約30年の徳増晃さん

大型トラックやトレーラーを約30年以上運転してきたベテランドライバーも「車中泊や長時間の運行に伴う疲労から解放された」と評価する。

大型ドライバー歴 約30年の徳増晃さん:
(体への負担が)全然違いますよね。(従来のやり方だと)トラックの中で風呂にも入れずに汗の状態で、身体だけ拭いて着替えて軽く仮眠をとるということが、若い人たちに耐えられるかな。日帰りにすることによって、すごくよくなるのでは。若い人にとっても(運送会社に)入りやすくなるのかな

効率的運行へ様々な工夫

遠州トラックの車両位置把握システム

また、遠州トラックでは運行記録や労働時間についても全てDX化することで正確に管理している。

トラックが今どこにいるかを表示する画面を見せてもらった。

荷物を積んだトラックは赤色の矢印で、積んでいないトラックは緑色の矢印で示され、走行ルートも記録される。現在地がわかり、帰社までの時間が把握できる。担当者は「4月から勤務時間が非常に厳しくなってきますので、それに応じた運行指示を出しています」と話す。

貨物専用フェリー

物流業界では異なる製品を同じトラックに積み込む「共同輸送」や長距離の移動に適した貨物専用フェリー、一度に2台分の荷物を運ぶことができるダブル連結トラックなど、ドライバー不足を解消し安定的な物流を実現する取り組みが進められている。

県トラック協会の佐野寛会長

静岡県トラック協会の佐野寛会長は「ポジティブな捉え方をすれば、これが実現すれば、ドライバーの労働環境は飛躍的に改善する。空いた時間ができればスキルアップにもつなるわけで、業界全体として考えれば働き方改革は何としても実現させなければ将来はない」と前を向く。

利用者である私たちも2024年問題の解決に協力できことがあるかもしれない。

荷物を受け取る際に宅配ボックスや置き配を利用したり、まとめ買いで注文したりすれば、再配達や運行回数を減らすことができるだろう。

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