2016年10月 2日放送 高濱正伸さん(第2002回)
- 会場
- 萩丘小学校(浜松市)
- 講師
- 花まる学習会代表 高濱正伸
講師紹介
1959年熊本県生まれ。東京大学・同大学大学院卒業。
1993年、思考力などを重視した「花まる学習会」を設立。
その後本格的な学習方法を伝授する「スクールFC」を設立。
子どもの「生き抜く力」を育てることを重視した教育が好評。
番組で紹介した本
わが子を「メシが食える大人」に育てる 著者:高濱正伸(廣済堂出版)第2002回「子育ての落とし穴」
講演では子育てをいつも時間軸に分けてお話しています。
4歳から9歳の芋虫のような幼児期、10歳のさなぎのような時期、
そして11歳から18歳までの蝶のような時期です。
芋虫と蝶は別の生き物です。
ですから時期によって子育てを切り替えてくださいとお話しています。
4-9歳は神の子と言い、相手が許してくれる時期ですので、
お母さんは手も出ているでしょう。
「食べなさい!」「寝なさい!」という感じで、
この時期にたたいたことがないお母さんはいないくらいです。
でも、きれいごとが蔓延してお母さんの心配に迎合するような言説が流布されると、
「私はいけない母親」だと、自分を責めてしまうケースも多くあります。
4-9歳は子どもが自信を持つことと、何かを好きになることが重要です。
親の心がけとしては、愛と躾です。子どもが自然にやって来るので、
思いきり抱きしめて、スキンシップを沢山とることです。
躾はダメなものはダメと言うことです。
受験勉強を例にとれば、4-9歳での躾が他のものに目もくれずに
やるべきことを黙々とやるための基礎になります。
11歳からは世間の理不尽も教える必要があります。
また、外の師匠が重要な時期です。
家ではブスッとしていても、野球部や吹奏楽部の先生の言うことは聞くのです。
閉じたカプセルの中で子育てをしていたあるお母さんがいました。
子どもは、小学校1年生の女の子でした。
お父さんはいますが、つながりが薄いという、よくあるパターンでした。
この子は盗癖を持っていました。そして背景に母親からの虐待がありました。
そのお母さんは私の講演会を聞いた後、電話をかけてきました。
初めは宿題をしないとか、他愛のない内容の相談でしたが、
実際に面談してみると、子どもに盗癖があることがわかりました。
聞くと彼女にはママ友もなく、ご主人は子育てを妻に任せきり。
両親はともに教師、本人は気丈な頑張り屋さんでした。
ですから子育ても孤軍奮闘、でも本当は寂しいということが伝わってきました。
私は「嘘だと思って、何でもいいから外に出て行って下さい」と言いました。
1年ほどたったある日、町で出会った彼女は全く様子が変わっていました。
とても自信に満ちてあふれていたのです。
聞くと、あれから(嘘だと思って)子育てサークルに参加してみたそうです。
するとそこには自分とほぼ同じ境遇の同じような悩みを持ったお母さんがいて、
初めて心から、安らかにしゃべれたとのこと。
地域が壊れた今、いわゆる"正しい子育て"に縛られて
身動きできなくなっているお母さんたち。
子育てに正解などないのです。