2020年9月20日放送 川村妙慶さん(第2197回)
- 会場
- テレビ静岡(静岡市)
- 講師
- 僧侶・アナウンサー 川村妙慶
講師紹介
福岡県生まれ。真宗大谷派僧侶。
関西を中心にラジオ番組のパーソナリティーなどをつとめる。
ホームページで日替わり法話を毎日更新し、
メールでの悩み相談にも応じている。
第2197回「もう一度届けたいメッセージ ~生きやすい自分に~」
【今をじっくり踏みしめて生きる】
人はなぜ悩むのでしょう。それは結果に納得できないからです。
どうしても今の状況が受け入れられないからです。人には欲望というものがあります。
「欲」という漢字は谷が欠けると書きます。
私たちは山の部分を見ずに欠けた谷のところばかりを見て思い悩んでしまいます。
希望というのは、欲望を満たすことではありません。
むしろ未完成な自分を受け入れ本来の生き方を探し求める気持ちが希望なのです。
欲望にとらわれるほど身近にある希望を遠ざけてしまいます。
そうではなく「与えられた命を精一杯喜んで生きさせてもらえればそれでいい」。
自分を妨げるものは必ずあります。
この妨げがあるからこそエネルギーに満ちて生きることができるのです。
将来があっての今ではありません。
人と比べるから焦ってしまいます。
私たちは、ひとりひとりみんな違います。
だからこそ味わいのある人間関係を築くことができるのです。
「ひとつひとつコツコツと」焦らずに今をじっくりと踏みしめた結果が
必ず希望につながっていることを忘れないでください。
【人間関係をよくする「聞く」と「伝える」】
人間関係をよくするコツは、何といっても「聞く」ということです。
浄土三部経のお経も必ず「如是我聞」という一句から始まります。
お釈迦様の教えを聞いた弟子たちが感動し、それを伝えようという気持ちの表れです。
では「聞く」ということはどういうことでしょうか?
例えば、学校から帰った子どもに「きょう学校どうだった?」と聞いてしまいますが、
これでは本当に聞いたことにはなりません。
「学校」というのは親の興味であって、答えを持って限定的に聞いています。
本当に聞くということは、学校という言葉をとるのです。
「きょうどうだった?」。それだけでいいのです。
また「伝える」ということは、言葉に気持ちを込めて届けることです。
いい言葉を使いましょう。何かを断るときもまず「ありがとう」から始めてください。
人間関係は、技術ではありません。
しっかりとその人に向き合えるのか、そして気持ちを届けられるのか、
聞く耳を持って無条件に人を受け入れられるのか。
まずは「聞いて」、そして「伝える」この繰り返しをぜひ実践してみてください。