2021年5月 2日放送 高濱正伸さん(第2228回)
- 会場
- 三島市民生涯学習センター(三島市)
- 講師
- 花まる学習会代表 高濱正伸
講師紹介
1959年熊本県生まれ。東京大学・同大学大学院卒業。
1993年、思考力などを重視した「花まる学習会」を設立。
その後本格的な学習方法を伝授する「スクールFC」を設立。
子どもの「生き抜く力」を育てることを重視した教育が好評。
番組で紹介した本
「メシが食える大人になる! もっと よのなかルールブック」監修:高濱正伸(日本図書センター)第2228回「逆境のデザイン」
きょうは「逆境」がテーマです。
あるデータで、経済的に成功した人たちを研究すると意外な共通点がありました。
成功した人は、逆境を楽しめるタイプの人が最も多かったそうです。
これはシンプルに言うと子どもの頃の遊びの質に影響しています。
例えば「雨が降ったら降ったで、その時は屋内でできる遊びをすればいい。」
「5人しか集まらないから野球ができない...ではなく、壁をキャッチャーにして5人の野球を楽しむ。」
常にルールを自分で作りながらおもしろがっているタイプです。
そしてこのタイプは心が強い人たちです。
挫折や失敗をした経験とそれを乗り越えた経験、このセットで人は強くなっていきます。
友だちとのケンカやトラブル、実は全て込みで「学校」なのです。
友だちと仲良くなることが一番の目標ですが、
いろいろ嫌なこともあるからこそ価値があります。
ところがいまは子どもにトラブルが起きると親が学校に文句を言う。
学校もケンカはいけないと徹底して指導しています。
基本的なスタンスは「いじめは学校には存在しません」です。
しかし、わが子を育てるときは「この子はきっと、何回か嫌なことが起きる」
というイメージをあらかじめ持っておくことが大切です。
そして何か起こっても堂々としていればいいのです。
一番いい方法は「ケンカしたの?」と聞いてあげて、
最後に「仲直りできたの?」と聞く。これだけでいいのです。
そして自分の力で仲直りできるような方向性を示してあげてください。
子どもの頃のケンカはよくあること。
「お互いにしばらくの間、ぎくしゃくするかもしれないけれど最後は仲直りすればいいんだよ。」
というメッセージを子どもたちに伝えてあげてください。
哲学者のルソーはこう言っています。
「子どもが嫌な目にあわないように転ばぬ先の杖でいろいろ手を出す親がいる。
それをやさしさと思っている。
ところが子ども自身のことを考えた時にそれは最も残酷な仕打ちだ。」と。
子どものトラブルに親が介入するのは最も残酷な仕打ちなのです。
わが子を守りたい、親に悪気はありません。
子どものために親も学校も近所も一体となって子育てをする環境、
そういう関係性が網の目になっていることが理想です。
すると子育てが楽になります。
毅然とした態度にいじめは寄り付きません。
しかし毅然とした態度にはやはり経験の積み重ねが必要です。
それが「逆境のデザイン」です。
子どもたちの強い心を育て、自分の力で輝けるようになって欲しいと思います。