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過去の放送

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2021年6月20日放送 相田一人さん(第2235回)

会場
静岡県男女共同参画センターあざれあ(静岡市)
講師
相田みつを美術館館長 相田一人

講師紹介

1955年栃木県生まれ。相田みつをの長男。
東京国際フォーラムにある「相田みつを美術館」館長。
現在、美術館業務の傍ら、
全国各地での講演活動や執筆活動を行っている。


ポイント第2235回「いまから ここから」

父、相田みつをは30歳の時に「筆一本で生きていく。」と宣言しました。

個展で書を売ることが収入源でしたが、当時はまったく売れず家計は常に火の車でした。

それでも父は深刻な顔はしませんでした。

しかし、当時の父の心境をよく表した作品があります。

『水中の陣』

背水の陣をモチーフにした父の造語です。

本当に切羽詰まった状況です。

既に水の中でずぶ濡れになりながら、あがきながら必死に頑張っている状態を表していました。

そんな父が自分の生き方を具体的に書いている作品があります。


『雨の日には雨の中を 風の日には風の中を』

父の代表作といってもいい作品です。

雨や風は人生の中で起こる苦しみや悩み。

生きている限りそれは尽きないと父は考えていました。

実は同じ題名でちょっと長い詩があります。


『暖かい春の陽ざしをポカポカと背中に受けて 平らな道をのんびりと歩いてゆく― 

そんな調子のいい時ばかりはないんだな 

あっちへぶつかり こっちへぶつかり やることなすこと みんな失敗の連続で 

どうにもこうにも 動きのとれぬことだってあるさ、

それでも わたしは自分の道を自分の足で 

歩いてゆこう 自分で選んだ道だもの― 』

これが前半です。この詩を読むと私はいつも父の背中を思い出します。

父は痩せていましたが背筋がピンと伸びていました。

父は雨や風から逃げることなく真正面から向き合ってきたのだと思います。

だけど真正面で向き合ってばかりいると疲れてしまいます。

どこかで折れてしまったり、倒れてしまったり。

そこで父は後半の詩をこんな風に書いています。


『涙を流すときには 涙を流しながら 

恥をさらすときは 恥をさらしながら 

口惜しいときには 「こんちくしょう!!」とひとり歯ぎしりを咬んでさ 

黙って自分の道を歩きつづけよう 

雨の日には雨の中を 風の日には風の中を― 』

泣きたいときは泣けばいい、ある意味、自然体といってもいい生き方です。

悔しさに涙を流したり、苦労したときに泣いたりしないとやりきれないのです。

父は自分の姿、自分の心の奥底まで見据えて言葉を紡ぎ出していました。

そして自分を深くみつめて見えてきたのは、決して強くない、むしろ「弱い」自分でした。

この作品は父なりに深い想いをこめてつくられた言葉だと思います。

そして次の作品が父の生き方そのものです。


『いまから ここから あしたはあてにならぬから』

「あとでやろう」と思ったらその瞬間にもうできなくなってしまっていることはたくさんあると思います。

何かやろうと思ったらまず「いまから ここから」。

過去を振り返ったり、将来を心配したりするのではなく、いまを大切に生きること。

その積み重ねで父は67年の人生を筆一本で生きてきたのだと思います。

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