2021年8月 8日放送 汐見稔幸さん(第2242回)
- 会場
- ぐうたら村(山梨県北杜市)
- 講師
- 東京大学名誉教授 汐見稔幸
講師紹介
1947年大阪府生まれ。日本保育学会会長や
白梅学園大学学長などを歴任。ぐうたら村村長。
専門は教育人間学、保育学、育児学。
現代の父親、母親の育児の応援団長をめざしている。
第2242回「自然ってすばらしい ~ぐうたら村から~」
今回のテレビ寺子屋は、八ヶ岳の中腹に位置する山梨県北杜市「ぐうたら村」からお届けします。
正面に富士山と南アルプスを望み、背後に八ヶ岳という開かれた空間。
ここ「ぐうたら村」は豊かな自然の中で保育や社会、生き方について学ぶ、
保育者のための研修施設で10年ほど前から村づくりを進めています。
唯一のルールは「他の人のぐうたらを邪魔しないこと。」自由な時間が流れる場所です。
「きょうは〇〇しなければならない」「いつまでに〇〇しなければ...」、
私たちの日常生活は「ねばならない」のオンパレード。
「ねばならない」を頑張っていると充実感はありますが
本当に自分がやりたいことをやっているのか?わからなくなってしまいます。
たった一度の人生、それぞれに自分らしい姿があるはずです。
だから一旦「ねばならない」を取り去って
自分のやりたいことは何だろう?とじっくり考えてみること、
それを私たちは「ぐうたら」と定義づけています。
自然に触れて「気分がいいな」と感じること。
そして古くから伝わる「生きる知恵」を学ぶことで本来の自分の姿を取り戻すきっかけを探ります。
ここ最近「持続可能な開発目標」(SDGs)とよく言われますが
ここでは「開発」ではなく、むしろ「生き方」。
「持続可能な生き方」を考え、そして学ぶ場所がここ「ぐうたら村」だと思っています。
「持続可能な...」というと「無駄を省く」とか「食品ロスをなくす」とか、そういうことももちろん大事です。
しかし、自然とふれあい、「自然ってすばらしい」と感じることで醸し出される
価値観や考え方、美意識があると思います。
森の中を歩いてみると朽ちた木や台風で倒れた木があります。
それが何かを支えていたり、それを伝って何かが伸びていたり、ある意味ムダがありません。
こうした自然界の役割分担やそのバランスが様々な気づきや発想を促してくれます。
例えば、大根の葉を捨てずに水に浸けて育ててみる。
それを土に戻したらどうなるのだろう?実際にやってみます。
これは「もったいない」ということだけでなく、「自然の生命力」を感じることだと思います。
また「断捨離」ということ。捨てる、処分をすることが目的と思いがちです。
しかし自分にとって本当に必要なものはなにか?を考えることで逆に大事なものが見えてきます。
忙しく生きている現代人が自然と楽しく対話しながら自らのいのちが求めているものを見つめ、発見すること。
「持続可能な生き方」を求めて様々な人たちが集い、その思いを共有できる場所とともに
「ねばならない」ではなく、自分の心の深いところが求めているものは何かを探す
「ぐうたら」した時間が大切なのだと思います。