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過去の放送

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2022年10月 9日放送 相田一人さん(第2301回)

会場
浅羽東コミュニティセンター(袋井市)
講師
相田みつを美術館館長 相田一人

講師紹介

1955年栃木県生まれ。相田みつをの長男。1996年から相田みつを美術館の館長を務める。全国各地での講演活動や執筆活動などを行う。2024年、相田みつを生誕100年を迎えた。


ポイント第2301回「言葉・コトバ・ことばはチカラ」

【つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの】

これは、父・相田みつをの代名詞と言ってもいい作品です。この作品はすべてひらがなです。戦争を体験し、父が戦後ふるさとに戻った時、世の中は激変していました。その時に「これからはひらがなの時代が来る」と予感したそうです。しかし、父の作品をよく見ると要所で巧みに漢字やカタカナを交えています。


【アノバチ コノバチ 思い当たるバチがいっぱい それでもまだ天がわたしを生かしてくれる】

ひらがなは柔らかい印象ですが、カタカナはどこか鋭く尖っています。父の言葉は他の誰かに向けたものではなく、すべて自分に向けた言葉です。特に自分自身に厳しい言い方をするとき、父はあえてカタカナを使っていました。


漢字を活かした作品もあります。

【ともかく具体的に動いてごらん 具体的に動けば 具体的な答が出るから】

いかにも父らしい表現です。この作品では、「具体的」がひらがなだったら意味がわかりづらくなってしまいます。父は「ひと目見てわかるもの」をモットーにしてきました。ですから「漢字で書いたほうが見ている方にスパッと伝わる」と、父は考えたのだと思います。漢字には長い歴史で培われた独特の重みがあります。

とある芸人がテレビでこの作品にまつわる思い出を語ってくれました。まだ無名だった若い頃、当時付き合っていた彼女と一緒にこの作品を見て涙が止まらなかったそうです。そして彼は、「具体的に動いて、有名になって、苦労をかけた彼女に報いる」と決意したそうです。「その後、どうなったんですか?」という番組司会者からの質問に、彼は次の作品をあげて答えました。

【けれど けれどで なんにもしない】

ひらがなは一見やわらかく、やさしい印象です。しかし父は、じわっと身体に沁み込んでくるような苦い言葉にもひらがなを使っていました。


そしてズバリ漢字で言い切った作品もあります。

【一生勉強 一生青春】

これは67年という短い人生を駆け抜けた父が座右の銘にしていた言葉です。この言葉が持つ趣きや爽快感を父は漢字で言い切ったのだと思います。


父・みつをは素朴なひらがなを使って、思いついた言葉を作品に残したと思われがちです。しかし実際は、常に様々な工夫を凝らしていました。ただし「見る人にそれが伝わるようではまだ本物ではない」と父は試行錯誤を繰り返しました。その結果、漢字・カタカナ・ひらがなを巧みに組み合わせて、自分の思いを伝えるという独自の書風にたどり着いたのだと思います。

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