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2022年11月27日放送 小菅正夫さん(第2308回)

会場
テレビ静岡(静岡市)
講師
札幌市円山動物園参与 小菅正夫

講師紹介

1948年北海道生まれ。
北海道大学獣医学部卒業後、旭川市旭山動物園に獣医師として勤務。
飼育係長、副園長を経て1995年園長に就任。
現在は札幌市環境局参与円山動物園担当。


ポイント第2308回「テナガザルの親子の絆」

シロテテナガザルは、親と子どもで群れを作ります。「家族群(ぐん)」といいます。今回はテナガザルの人工哺育から学んだ親子の絆を紹介します。

円山動物園には、雄のコタロウ、雌のラーチャがいます。この2頭の間に生まれたのがローラです。出産直後、ラーチャの子どもの抱き方が不自然なことに気づきました。そして生後10日目を過ぎた頃には自然哺育の限界がきてしまったのです。実はラーチャは密輸されて日本で育ち、その後、動物園に保護されました。ラーチャ自身、親の愛情を受けて育てられたことがありません。このため過去にも育児放棄や虐待を繰り返していました。本来、霊長類は人工哺育をすべきではありません。しかし徐々に弱っていくローラを助けるために期間を限って飼育員が育てることを決断しました。

人の体温や心音が伝わらないように、常に枕のような布を抱かせました。そしてミルクを飲んだローラは徐々に元気を取り戻していきました。心配だったのは、母親のラーチャの気持ちが離れてしまうことです。ところがローラを連れて飼育員が近づくとラーチャだけでなく父親のコタロウも一緒にじっとローラを見つめていました。両親ともに子どもに対する気持ちは離れていないようです。金網越しに会わせた時も、我が子をじっと見つめてその場を離れませんでした。

ローラは成長とともに母親を求める気持ちが高まっていきました。一方、母親のラーチャは、一度離れてしまった我が子が目の前にいるにもかかわらず、なかなか自分のところに戻ってこないことに苛立ちのようなものを感じていました。ここが、ちょうどいいタイミング。ここを逃すとローラを両親のもとに帰すことはできません。

この時に大事なのが父親の存在です。金網越しにローラの毛繕いをする母親のラーチャ、その様子を父親のコタロウがじっと見守っていました。ローラへの愛情とともにラーチャをしっかりと見守る様子も感じられました。もうこれで大丈夫。ローラを両親のもとに帰すことになりました。生後157日が経っていました。

ローラを両親のもとに帰す日、ラーチャが力まかせに抱き寄せて最悪の事態に陥る心配も残っていました。しかし、ラーチャの行動は私たちの想像とまったく違っていたのです。ゆっくりとローラに近づき両手を広げて胸を出しました。そしてじっと待っています。その姿は「私の胸においで」と語りかけているようでした。ローラが抱きつくとラーチャはそっと抱き寄せてゆっくりと木の上にあがっていきました。

いま円山動物園にはシロテテナガザルの親子3頭の仲睦まじい姿があります。しかし話はまだ終わりではありません。ラーチャが今回の経験から学び、次の子育てを無事に成功させること、そしてローラが将来母親になってしっかり子育てができた時に今回の人工哺育は本当のゴールを迎えます。

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