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過去の放送

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2023年10月22日放送 鎌田實、さだまさしさん(第2353回)

会場
諏訪市原田泰治美術館(長野県)
講師
 鎌田實、さだまさし

講師紹介

■鎌田實(医師・作家)
1948年東京生まれ。諏訪中央病院名誉院長。
地域医療に携わる傍ら、被災地支援にも取り組む。

■さだまさし(シンガーソングライター)
1973年フォークデュオ・グレープとしてデビュー。
1976年ソロ活動開始。コンサートは通算4600回を超える。


ポイント第2353回「鎌田實・さだまさしスペシャル対談 ~こころの故郷~」

今回のテレビ寺子屋は、長野県にある諏訪市原田泰治美術館から、鎌田實さんとさだまさしさんの対談をお送りします。鎌田さんとさださんは、原田泰治さんの紹介をきっかけに出会い、親交を深められたそうです。

諏訪市出身のグラフィックデザイナーで画家の原田泰治さんは、小児麻痺により両足が不自由でしたが、全国各地を取材し、古き良き原風景を作品に残されました。瓦や石垣ひとつひとつ、花びらや野原の草1本1本まで丁寧に描かれた作品は、見る人のこころの故郷と重なり、どこか懐かしく感じられるものばかりです。

3回にわたってお届けする鎌田實・さだまさしスペシャル対談。初回は「こころの故郷(ふるさと)」をテーマにお話しします。


さだ:
僕の故郷、長崎には「精霊流し」という行事があります。毎年8月15日、「精霊船」という手作りの船を曳きながら街中を練り歩き、故人の霊を弔うお盆の伝統行事です。長崎の人は、葬儀と精霊流し、二度お別れをします。昔は実際に海に浮かべていました。祖母が亡くなったときには、僕も父と一緒に精霊船をかついで海に流しました。でも本物の船ではないので、だんだん水がしみてきます。汐にひかれ遠ざかっていきながら、暗闇の中で提灯の灯がポッ、ポッポッと消えて、全部消えたらあきらめて帰るんです。あのときの帰り道の足の重いこと。その帰り道を歌にしました。

以前、長崎出身で文芸評論家の山本健吉さんに「先生、故郷ってなに?」と聞いたことがあります。すると先生は、「母の町」とポツリと言ったんです。しばらく歩いていたら今度は、「町が僕を覚えてくれている町」と言いました。

そのときは「町が僕を覚えてくれている」という感覚がわかりませんでした。ところが大人になって、子どものころバイオリンの稽古に通っていた長崎の古い通りを通ったときのことです。お寺の屋根のところに大きな傷があるのを見つけて、「あれ、僕の子どものころからあの傷はあのままだ」と思い、「町が僕を覚えてくれているってこういうことなのかな」と、腑に落ちました。


鎌田:
僕にとっての「こころの故郷」。思い出に残っているのは東京赤羽の長屋で育ったことです。向かいの家ですき焼きを作るとなると、うちのガスのホースを出して貸すんです。すき焼きが出来上がるころになると「食べに来てもいいよ」と言われてお邪魔する。母が病弱で入院し、父が遅くまで働いて家にいないことを知ると、「實ちゃん、うちでご飯食べなさい」と声をかけてくれる。周りの人に支えられた赤羽の記憶、東京の下町の雰囲気がありました。そして25歳でこの諏訪盆地にやってきて、約50年。諏訪はいいところです、大好きになりました。ここが僕の故郷になりました。


さだ:
僕は13歳で東京に出てきたので、いまだに長崎のことが好きなんです。13歳で長崎を離れ、東京の下町葛飾で下宿して、千葉の市川で青春時代を過ごし、そして諏訪も。僕はいっぱいありますね、故郷が。


鎌田:
原田泰治さんは「故郷」をテーマに全国を取材し、消えゆく日本の情景を作品に残しました。その絵は、みんなが懐かしいと感じるものばかりです。長崎でも北海道でも沖縄でも、誰にとっても「こころの故郷」になれる。原田泰治さんの絵は、これから日本の大事なものがだんだん風化していくときに必要になってくるんじゃないかな。


さだ:
これは文化遺産だと思います。画家の目ってすごいですよね、原田泰治さんは「鳥の目」と「虫の目」を持ち、雪も1粒1粒描くんです。その絵には魂とストーリーがあるからゆっくり味わってほしい。

原田泰治さんのロサンゼルス展に行った時、大きなレンゲ畑の絵の前でアメリカ人の女性が泣いていました。「これは、まさに私の故郷だ」と言うんです。「ああ、原田泰治の描く絵を見ると、世界中の人が故郷を想うんだな」と感じました。自分のこころの故郷と出会えるって嬉しいものです。

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