2008年1月19日放送 長谷川博一さん(第1568回)
- 会場
- 裾野市立西小学校(裾野市)
- 講師
- 臨床心理士 長谷川博一
講師紹介
1959年名古屋市生まれ。東海学院大学人間関係学部心理学科教授。専門は心理療法、犯罪心理、児童虐待、スクールカウンセリング等。学校、児童相談所、裁判所と連携した実践活動や、不登校の子どもの家庭にメンタルフレンドを派遣する活動等を行う。
第1568回「お母さんはしつけをしないで」
『今日は、体の調子が悪くて辛いです』唐突ですが、これが今の私の率直な気持ちです。講演会というと、きちんとした挨拶から始まるのが普通かもしれませんが、私はそういう固定概念が好きではありません。そういうキレイな気持ちを「白」とすると、私が冒頭で発した言葉は「黒」ということになります。
私は、犯罪の加害者等のカウンセリングをしているのですが、そこで見えてくるものが、この「白」と「黒」です。親は子供に優秀に育ってもらいたいと思い、厳しくしつけます。しかし、親が子供の「白」の部分に過剰に期待しすぎると、子供の心は、本当の自分と理想の自分が乖離してしまいます。しつけをするということがかえって仇となってしまっているのです。
では、しつけられた子供たちの「黒」の部分はどうなっているのでしょうか。成績優秀で明るい子供が、突然世間を騒がすような事件を起こすことは珍しくありません。このような子供たちは、親が気付かないところでSOSを発しています。しかし、自分の「黒」の気持ちを上手く表現することができず、誰にも気付いてもらえません。その結果、犯罪や自殺という結果を招いてしまうのです。
私は、しつけというのは、親が子供に対して厳しく教えるものではなく、日常生活の中で、自然と子供が吸収していくことだと思っています。そのためには、親である皆さんも自分の気持ちと向き合う必要があります。『いい親でいなければいけない』と「白」の自分ばかり気にしていませんか。自分の未熟さも認め、子供の可能性を信じてあげることで初めて、子供は成長していくのではないでしょうか。