2009年2月14日放送 堀俊輔さん(第1622回)
- 会場
- 大村公民館(焼津市)
- 講師
- 東京交響楽団指揮者 堀俊輔
講師紹介
1950年大阪府生まれ。
早稲田大学文学部を経て東京芸術大学で作曲と指揮を学ぶ。
その後東京交響楽団入団。
市民合唱団や子ども達の音楽教育にも力を入れている。
第1622回「指揮者の素顔」
指揮者というと名前は知っていてもどんなことをしているのか詳しいことはよくわからないと思います。そこで今日は指揮者の素顔をお話してみたいと思います。
まず今日私が着ている衣装は黒タキシードですが、これが指揮者を語る上で大きなカギを握っています。クラシックの演奏会ともなるとホテルで開催されることも少なくないのですが、廊下を歩いているとウェイターに間違えられることがよくあります。実はこれがミソで、もとは指揮者もウェイターと同じようにタキシードを着て貴族に仕える身分だったのです。ウェイターは料理で、指揮者は音楽でもてなす仲間でした。それが近代になると、オーケストラを専門とする指揮者が登場してきたというわけなのです。
戦後まもなく東京芸術大学に指揮科が設置され私も後年そこに通うことになるのですが、指揮者の誰もが同じ道を歩んでいるわけではありません。私の場合はその中でも特に変わったプロセスを歩んでいて、周りの指揮者に比べると、10年遅れています。小さい頃から音楽が身近にある家庭に育ちましたがしかし幸せな日々は長く続きません。その後紆余曲折の歴史が始まるのですが、詳しい話は次回にしたいと思います。
私が今指揮者をしていて醍醐味に感じることはなんと言っても自分の振る棒によって、プロのオーケストラが動くという劇的な瞬間です。そして自分の仕事を多くの観客に感謝してもらえるということです。そんな指揮者という仕事を誇りに感じています。