2022年3月 6日放送 天達武史さん(第2270回)
- 会場
- テレビ静岡(静岡市)
- 講師
- 気象予報士 天達武史
講師紹介
1975年、神奈川県生まれ。27歳で気象予報士試験に合格。「アマタツ」の愛称で親しまれる。2005年からフジテレビの朝の情報番組に出演。現在は、「めざまし8」の気象防災キャスターを担当。
第2270回「常識を変えるとき」
番組の取材でマーシャル諸島を訪れました。
オーストラリアとハワイの間、太平洋上に位置する島国で、
今にも沈んでしまうおそれがある島のひとつです。
地球温暖化の原因は
二酸化炭素(CO₂)の排出量が増えたことによる温室効果とされていますが、
マーシャル諸島で暮らす人たちはCO₂をほとんど出していません。
しかし地球温暖化の影響を直接受けています。
温暖化の危機はここにあります。
いま大切なことは「常識を変える」ことです。
温暖化対策は成果がすぐに目に見えるものではありません。
いまの取り組みが結果として表れるのは早くても20年後。
ただ20年後に同じことをやっても手遅れになります。
では実際に地球はいま、どういう状況なのでしょうか?
過去130年間で年平均気温は0.85℃上がっています。
1℃に満たないという印象を持つかもしれませんが、
過去2000年、地球規模の歴史からみると横ばいだった気温が
ここ100年で急激に上がっているのです。
グラフを見るとホッケーのスティックのような逆L字型の曲線になります。
気温の上昇はもはや自然の成り行きではなく、
私たち人間が原因であることは疑う余地がありません。
温暖化は気温の上昇以外にも様々な影響があります。
まず台風の大型化。そして大雨にも警戒が必要です。
また雪の降り方が一気にドカ雪になる場合もあります。
私たちの生活に大きな支障を来たすおそれがあります。
このまま温暖化が進んだ場合、2100年の天気予報をシミュレーションしてみます。
夏の晴れた日、北海道から九州まで最高気温が40℃以上。
東京、名古屋は44℃、大阪は43℃です。
こうなると1日におよそ12万人が熱中症で搬送される事態を引き起こします。
昼間、普通に暮らすことが難しい状況です。
こうした事態を避けるためには
CO₂など温室効果につながるガスを減らしていかなければなりません。
まず森や植物を増やしていくこと。
身近な取り組みとしては夏に「緑のカーテン」を設置することなどです。
庭やベランダにちょっとした緑(植物)を植えることでも構いません。
街全体で取り組めばその街の気温は1~2℃下がるはずです。
実はもうひとつCO₂を吸収してくれるものがあります。
それは海です。わかりやすい実験があります。
水を半分ほど入れたペットボトルにCO₂を入れてよく振ります。
するとCO₂が水に吸収されてペットボトルが凹みます。
しかし同じ実験を2回繰り返すと2回目はほとんど凹みません。
つまり吸収には限界があっていまその状況に近づきつつあるのかもしれません。
地球温暖化対策の3カ条は
「深刻に考えない」「1人よりみんなで」「発信する」です。
身近で楽しみながらできること、地球にやさしいことをみんなで。
また、うまくいった成果を周りに伝えること、これが大事です。
こうした取り組みをいま始めることが「常識を変えること」につながっていくと思います。